唾液(だ液)の働き

唾液(だえき)の生理作用






唾液(だえき)の作用・働き
唾液の主な生理作用
  1. 再石灰化作用
  2. 粘膜保護作用
  3. 消化作用
  4. 抗菌作用
  5. 自浄作用
  6. pH緩衝作用

再石灰化作用


虫歯菌が出した酸や甘い酸性の飲食物などによって、歯のカルシウムやミネラルが溶け出します。
歯の表層付近が溶解する現象を、脱灰 (だっかい)と呼びます。
虫歯菌の発生する酸により、歯は、いつも少しずつ溶解しています。

一方、
唾液は、カルシウムやミネラルを歯に補給し、歯の再石灰化を促進し、痛んだ歯を修復します。
これを再石灰化作用といいます。


唾液には歯の成分であるハイドロキシ・アパタイトが含まれており、歯の表面を常に修復しています。
再石灰化作用が弱い人は、虫歯にかかりやすく、治りにくいといえます。


粘膜保護作用



唾液には、粘性タンパク質のムチンが含まれています。
ムチンは水分を多く含む分子構造しており、粘膜や食べ物を覆う作用があります。

粘膜の表面を覆ったムチンは、乾燥を抑え、口の中の粘膜を保護する効果があります。

ムチンは、口の中に付着している細菌を取り込み、集させ、菌塊とし、口内から排出する働きをしています。
また、食べ物を覆うと同時に、軟化し、滑らかにして嚥下しやすくします。

消化作用


唾液の中には、消化酵素のアミラーゼが含まれています。
アミラーゼは、糖質を分解し、体内に吸収しやすい状態にする酵素です。

「唾液アミラーゼ」は、プチアリン(α-アミラーゼ)と呼ばれ、炭水化物の中に含まれているデンプンを分解します。

分解されたデンプンは、腸粘膜で、速やかに吸収されます。


抗菌作用


人体で外に開いている部分(口、目、鼻など)には、外から浸入してくる細菌などを防ぐ役割をしている、生体防御機能が働いています。

口の場合、だ液に含まれるリゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、ムチンが、病原微生物の増殖を抑え、殺菌します。

リ ゾチームは、その役割をするもののひとつで、唾液だけでなく、涙、汗、リンパ腺、鼻粘液、肝臓、腸管など、生物体内に広く分布している、抗菌作用を持った酵素です。

リゾチームは、色々な細菌感染から生体を守り、生命維持に欠かせないものです。


自浄作用


だ液は、口の中の細菌や食物残渣(食べカス)を洗い流し、清潔に保ちます。 

だ液の分泌量が減ると、口腔内が汚れ、歯の表面や歯の間に付着したプラークは、虫歯や口臭の原因になります。


ファーストフードなど、あまり噛まなくてもよい食事が多くなると、唾液が十分に分泌されず、流れが悪くなります。



pH緩衝作用(ペーハーかんしょうさよう)


唾液(だえき)は、急激なpHの変化を防ぎ、一定に保ちます。
酸性の環境から歯を守る機能が、唾液の緩衝作用です。


緩衝とは、”対立する物の間にあって、それらの衝突をやわらげること”です。
化学的には 「酸や塩基を加えても、水素イオン濃度をほぼ一定に保つこと」となります。
つまり、pHをほぼ一定に保つ作用が、緩衝作用ということです。


 
歯は、体の中で最も硬い組織ですが、酸に弱いのが、欠点です。
歯は、甘い酸性の飲食物、細菌から発生する酸、乳酸、胃からの分泌液などにより、簡単に溶けてしまいます。

口の中は、通常は、phが6.8~7.0で、中性を保っています。
ph(ペー ハー)が、5.5以下の、酸性状態が長時間続くと、歯が溶けてムシ歯になります。  


飲食をすると、 の中は、すぐに酸性へと傾きますが、唾液の持つ、緩衝作用は、口の中をいち早く 中性に戻し、歯が溶けムシ歯になることを防いでくれます。

正常な唾液(だえき)なら、 飲食後、30分~40分程度で、もとのpH(ペー ハー)まで回復します。

ですので、ph(ペー ハー)が回復しないうちに間食を多くすると、酸性の状態から回復しないため、虫歯が発生しやすくなります。



味覚


味覚は、「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」・「うま味」といった5つの味を指します。
味覚の仕組みは、
  1. 食べ物に含まれる味物質が、唾液の中に溶け込む
  2. 舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容器に届けられる
  3. 味を感じる

つまり、唾液がないと、食べ物の味は、味蕾に届かなくなります。
また、唾液の不足は、潤滑作用を無くしますし、舌がこすれて味蕾がなくなったり、舌炎を起こして味蕾が働かなくなったりもします。

つまり、唾液が足りないと、食べ物の本来の味が判らなくなるという“味覚障害”に陥ってしまうのです。
味覚障害と舌苔

 

円滑作用

そしゃくや飲み込みの補助作用をします。
口の中を湿らせ発音をスムーズにします。



唾液の特徴

成分 :水分 99 %以上、有機物(亜鉛含有タンパクなど) 0.4 ~ 0.5 %、無機物 0.1 ~ 0.3 %、ガス
1日分泌量 :1 ~ 1.5L (個人差大きく、体調による変動も大きい)
ph(ペーハー):pH6.3 ~ 6.8 (分泌が盛んになるとアルカリ性に傾く)
性質:粘稠不透明な液体
比重 :1.002 ~ 1.008