唾液(だえき)の生理作用
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再石灰化作用
虫歯菌が出した酸や甘い酸性の飲食物などによって、歯のカルシウムやミネラルが溶け出します。
歯の表層付近が溶解する現象を、脱灰 (だっかい)と呼びます。
虫歯菌の発生する酸により、歯は、いつも少しずつ溶解しています。
一方、
唾液は、カルシウムやミネラルを歯に補給し、歯の再石灰化を促進し、痛んだ歯を修復します。
これを再石灰化作用といいます。
唾液には歯の成分であるハイドロキシ・アパタイトが含まれており、歯の表面を常に修復しています。
再石灰化作用が弱い人は、虫歯にかかりやすく、治りにくいといえます。
粘膜保護作用
唾液には、粘性タンパク質のムチンが含まれています。
ムチンは水分を多く含む分子構造しており、粘膜や食べ物を覆う作用があります。
粘膜の表面を覆ったムチンは、乾燥を抑え、口の中の粘膜を保護する効果があります。
ムチンは、口の中に付着している細菌を取り込み、集させ、菌塊とし、口内から排出する働きをしています。
また、食べ物を覆うと同時に、軟化し、滑らかにして嚥下しやすくします。
消化作用
唾液の中には、消化酵素のアミラーゼが含まれています。
アミラーゼは、糖質を分解し、体内に吸収しやすい状態にする酵素です。
「唾液アミラーゼ」は、プチアリン(α-アミラーゼ)と呼ばれ、炭水化物の中に含まれているデンプンを分解します。
分解されたデンプンは、腸粘膜で、速やかに吸収されます。
抗菌作用
人体で外に開いている部分(口、目、鼻など)には、外から浸入してくる細菌などを防ぐ役割をしている、生体防御機能が働いています。
口の場合、だ液に含まれるリゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、ムチンが、病原微生物の増殖を抑え、殺菌します。
リ ゾチームは、その役割をするもののひとつで、唾液だけでなく、涙、汗、リンパ腺、鼻粘液、肝臓、腸管など、生物体内に広く分布している、抗菌作用を持った酵素です。
リゾチームは、色々な細菌感染から生体を守り、生命維持に欠かせないものです。
自浄作用
だ液は、口の中の細菌や食物残渣(食べカス)を洗い流し、清潔に保ちます。
だ液の分泌量が減ると、口腔内が汚れ、歯の表面や歯の間に付着したプラークは、虫歯や口臭の原因になります。
ファーストフードなど、あまり噛まなくてもよい食事が多くなると、唾液が十分に分泌されず、流れが悪くなります。
pH緩衝作用(ペーハーかんしょうさよう)
唾液(だえき)は、急激なpHの変化を防ぎ、一定に保ちます。
酸性の環境から歯を守る機能が、唾液の緩衝作用です。
緩衝とは、”対立する物の間にあって、それらの衝突をやわらげること”です。
化学的には 「酸や塩基を加えても、水素イオン濃度をほぼ一定に保つこと」となります。
つまり、pHをほぼ一定に保つ作用が、緩衝作用ということです。
歯は、体の中で最も硬い組織ですが、酸に弱いのが、欠点です。
歯は、甘い酸性の飲食物、細菌から発生する酸、乳酸、胃からの分泌液などにより、簡単に溶けてしまいます。
口の中は、通常は、phが6.8~7.0で、中性を保っています。
ph(ペー ハー)が、5.5以下の、酸性状態が長時間続くと、歯が溶けてムシ歯になります。
飲食をすると、 口の中は、すぐに酸性へと傾きますが、唾液の持つ、緩衝作用は、口の中をいち早く 中性に戻し、歯が溶けムシ歯になることを防いでくれます。
正常な唾液(だえき)なら、 飲食後、30分~40分程度で、もとのpH(ペー ハー)まで回復します。
ですので、ph(ペー ハー)が回復しないうちに間食を多くすると、酸性の状態から回復しないため、虫歯が発生しやすくなります。
味覚
味覚は、「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」・「うま味」といった5つの味を指します。
味覚の仕組みは、
- 食べ物に含まれる味物質が、唾液の中に溶け込む
- 舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容器に届けられる
- 味を感じる
つまり、唾液がないと、食べ物の味は、味蕾に届かなくなります。
また、唾液の不足は、潤滑作用を無くしますし、舌がこすれて味蕾がなくなったり、舌炎を起こして味蕾が働かなくなったりもします。
つまり、唾液が足りないと、食べ物の本来の味が判らなくなるという“味覚障害”に陥ってしまうのです。
味覚障害と舌苔
円滑作用
そしゃくや飲み込みの補助作用をします。口の中を湿らせ発音をスムーズにします。
唾液の特徴 |
成分 :水分 99 %以上、有機物(亜鉛含有タンパクなど) 0.4 ~ 0.5 %、無機物 0.1 ~ 0.3 %、ガス |
1日分泌量 :1 ~ 1.5L (個人差大きく、体調による変動も大きい) |
ph(ペーハー):pH6.3 ~ 6.8 (分泌が盛んになるとアルカリ性に傾く) |
性質:粘稠不透明な液体 |
比重 :1.002 ~ 1.008 |