唾液(だ液)の働き

唾液(だえき)の生理作用






唾液(だえき)の作用・働き
唾液の主な生理作用
  1. 再石灰化作用
  2. 粘膜保護作用
  3. 消化作用
  4. 抗菌作用
  5. 自浄作用
  6. pH緩衝作用

再石灰化作用


虫歯菌が出した酸や甘い酸性の飲食物などによって、歯のカルシウムやミネラルが溶け出します。
歯の表層付近が溶解する現象を、脱灰 (だっかい)と呼びます。
虫歯菌の発生する酸により、歯は、いつも少しずつ溶解しています。

一方、
唾液は、カルシウムやミネラルを歯に補給し、歯の再石灰化を促進し、痛んだ歯を修復します。
これを再石灰化作用といいます。


唾液には歯の成分であるハイドロキシ・アパタイトが含まれており、歯の表面を常に修復しています。
再石灰化作用が弱い人は、虫歯にかかりやすく、治りにくいといえます。


粘膜保護作用



唾液には、粘性タンパク質のムチンが含まれています。
ムチンは水分を多く含む分子構造しており、粘膜や食べ物を覆う作用があります。

粘膜の表面を覆ったムチンは、乾燥を抑え、口の中の粘膜を保護する効果があります。

ムチンは、口の中に付着している細菌を取り込み、集させ、菌塊とし、口内から排出する働きをしています。
また、食べ物を覆うと同時に、軟化し、滑らかにして嚥下しやすくします。

消化作用


唾液の中には、消化酵素のアミラーゼが含まれています。
アミラーゼは、糖質を分解し、体内に吸収しやすい状態にする酵素です。

「唾液アミラーゼ」は、プチアリン(α-アミラーゼ)と呼ばれ、炭水化物の中に含まれているデンプンを分解します。

分解されたデンプンは、腸粘膜で、速やかに吸収されます。


抗菌作用


人体で外に開いている部分(口、目、鼻など)には、外から浸入してくる細菌などを防ぐ役割をしている、生体防御機能が働いています。

口の場合、だ液に含まれるリゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、ムチンが、病原微生物の増殖を抑え、殺菌します。

リ ゾチームは、その役割をするもののひとつで、唾液だけでなく、涙、汗、リンパ腺、鼻粘液、肝臓、腸管など、生物体内に広く分布している、抗菌作用を持った酵素です。

リゾチームは、色々な細菌感染から生体を守り、生命維持に欠かせないものです。


自浄作用


だ液は、口の中の細菌や食物残渣(食べカス)を洗い流し、清潔に保ちます。 

だ液の分泌量が減ると、口腔内が汚れ、歯の表面や歯の間に付着したプラークは、虫歯や口臭の原因になります。


ファーストフードなど、あまり噛まなくてもよい食事が多くなると、唾液が十分に分泌されず、流れが悪くなります。



pH緩衝作用(ペーハーかんしょうさよう)


唾液(だえき)は、急激なpHの変化を防ぎ、一定に保ちます。
酸性の環境から歯を守る機能が、唾液の緩衝作用です。


緩衝とは、”対立する物の間にあって、それらの衝突をやわらげること”です。
化学的には 「酸や塩基を加えても、水素イオン濃度をほぼ一定に保つこと」となります。
つまり、pHをほぼ一定に保つ作用が、緩衝作用ということです。


 
歯は、体の中で最も硬い組織ですが、酸に弱いのが、欠点です。
歯は、甘い酸性の飲食物、細菌から発生する酸、乳酸、胃からの分泌液などにより、簡単に溶けてしまいます。

口の中は、通常は、phが6.8~7.0で、中性を保っています。
ph(ペー ハー)が、5.5以下の、酸性状態が長時間続くと、歯が溶けてムシ歯になります。  


飲食をすると、 の中は、すぐに酸性へと傾きますが、唾液の持つ、緩衝作用は、口の中をいち早く 中性に戻し、歯が溶けムシ歯になることを防いでくれます。

正常な唾液(だえき)なら、 飲食後、30分~40分程度で、もとのpH(ペー ハー)まで回復します。

ですので、ph(ペー ハー)が回復しないうちに間食を多くすると、酸性の状態から回復しないため、虫歯が発生しやすくなります。



味覚


味覚は、「甘味」・「酸味」・「塩味」・「苦味」・「うま味」といった5つの味を指します。
味覚の仕組みは、
  1. 食べ物に含まれる味物質が、唾液の中に溶け込む
  2. 舌の「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚受容器に届けられる
  3. 味を感じる

つまり、唾液がないと、食べ物の味は、味蕾に届かなくなります。
また、唾液の不足は、潤滑作用を無くしますし、舌がこすれて味蕾がなくなったり、舌炎を起こして味蕾が働かなくなったりもします。

つまり、唾液が足りないと、食べ物の本来の味が判らなくなるという“味覚障害”に陥ってしまうのです。
味覚障害と舌苔

 

円滑作用

そしゃくや飲み込みの補助作用をします。
口の中を湿らせ発音をスムーズにします。



唾液の特徴

成分 :水分 99 %以上、有機物(亜鉛含有タンパクなど) 0.4 ~ 0.5 %、無機物 0.1 ~ 0.3 %、ガス
1日分泌量 :1 ~ 1.5L (個人差大きく、体調による変動も大きい)
ph(ペーハー):pH6.3 ~ 6.8 (分泌が盛んになるとアルカリ性に傾く)
性質:粘稠不透明な液体
比重 :1.002 ~ 1.008

味覚障害と舌苔

味覚障害の種類


味覚は甘味、塩味、酸味、苦味、旨みの5要素からなります。

味覚を感じる器官は、味蕾みらいと呼ばれ、そのほとんどは、舌の表面の乳頭にゅうとう(糸状しじょう乳頭を除いた有郭ゆうかく乳頭、葉状ようじょう乳頭、茸状じじょう乳頭)という組織に存在します。
糸状乳頭(しじょうにゅうとう)と舌乳頭(ぜつにゅうとう)



味覚障害を大別すると
  • 味覚減退・味覚消失
  • 異味症
  • 自発性異常味覚
  • 解離性味覚障害
  • 悪味症

味覚減退・味覚消失

味の感じ方が鈍くなる。味を感じなくなる。

異味症

本当は甘いのに、苦く感じる等、本来とは違った味を感じる。

自発性異常味覚

口の中に何もないのに、苦味や渋みなどを感じる。

解離性味覚障害

ある特定の味(甘味など)が判らなくなる。

悪味症

何を食べても、まずく感じ、嫌になる。

味覚障害の原因


味覚障害は、もともとは中高年以降に多く発症します。
味覚に対する感度は、高齢になるほど、低下しますが、近年は、若年層にも、味覚機能の低下が見られます。


味覚障害の原因のNo1は亜鉛の不足です


亜鉛が不足すると、味蕾細胞の分化が停滞し、味覚センサーが鈍ることで、味覚に異常をきたします。 
亜鉛は体内合成が出来ない物質で、食物から摂取します。
食生活の乱れや、無理なダイエットが原因で、10~20代の子どもにまで、亜鉛不足が広まっています。


舌苔が原因の味覚障害が増えています


舌苔が増えすぎた結果の味覚障害


舌苔が増えすぎると、味蕾(みらい)の働きが衰え、味覚感度が鈍くなり、口臭も強くなります。
舌を適度に清掃する事で、味覚に対する感受性が高まります。

そして、美味しく感じる味が、濃度の高い濃い味のものから、濃度の低いうす味に変化し、塩分の過剰摂取も防げます。


舌苔を取りすぎた結果の味覚障害


近年の若年層に多いのは、口臭を気にするあまり、舌苔を取りすぎ、味蕾(みらい)を傷つけ、味覚障害になることです。

ある程度の舌苔は、口腔内の健康状態を維持するために必要なのですが、舌苔除去用のブラシを使い、ゴシゴシと取りすぎてしまうのです。
舌苔を取りすぎても、口臭は強くなります。

舌苔と口臭

簡単で安全な、舌苔取りの方法は?~BREO(ブレオ)~なめるプロテアーゼで舌苔が取れる

舌の苔(コケ)の取り方について~取って良い量と悪い量


舌苔には取って良い量と、取りすぎてはいけない量がある


舌苔は舌の健康を維持する上で、ある程度必要です。
舌苔を取りすぎた時に起こることは、大きく2つのパターンになります。

  1. 舌苔が無くなる・出来なくなる=無苔
  2. 取っても、取っても、すぐに舌苔が出来てしまう

舌苔が無くなる・出来なくなる=無苔


舌に苔が出来なくなるのは、主に、舌乳頭が委縮してしまう時です。

本来、残すべき舌苔すら取り除くために、ブラシ等を使い、物理的な方法で、舌の表面をこすると、繊細な舌乳頭は、簡単に傷つけられます。

  1. 苔が無くなると、保護するものがなくなり、細胞がむき出しになります。
  2. 血液が集中してくると、舌は鮮やかな赤やピンク色に見えるようになります。
  3. 舌が熱く感じるようになり、ストレスや緊張で唾液は不足し、熱により唾液の揮発(蒸発)が起こります。
  4. 口の中が乾燥すると、抑えられていた口臭が激しくなります。
  5. 舌の表面は、出血しやすくなり、舌のしびれが消えなくなったり、味覚を感知する味蕾(みらい)の機能が狂い、味覚障害を起こすこともあります。

最終的には、舌に苔が出来なくなります。


正常な舌乳頭の顕微鏡写真・拡大画像
正常な舌乳頭の顕微鏡写真
損傷した舌乳頭の顕微鏡写真・拡大画像
損傷した舌乳頭の顕微鏡写真

取っても取っても舌苔が出来てしまう

上とは、逆のパターンです。
必要以上に舌苔を取り除くと、生体の防御反応として、より早く新しい舌苔を作り、舌表面粘膜を保護しようとすると、考えられています。
一種の、修復作用ですね。
過剰な分厚い舌苔と言うのは、このような場合です。

舌の周辺にまで白い苔がびっしりとついており、正常な舌表面に赤い点状に見えていた味蕾細胞はまったく見ることができません。
当然、口臭も激しくなります。




舌をおおってしまった舌苔:厚白苔の画像写真
舌を覆った苔


味蕾(みらい)が見えないほど分厚い舌苔の画商写真
びっしりと張り付いた舌苔:厚白苔

正常な舌苔~画像写真付き

正常な舌苔=健康的な舌とは


良い舌苔の目安


舌の苔は、正常な場合には、舌の回りと尖端にはなく、舌先1センチくらいから奥に行くにしたがって、白い苔が全体に薄く均等についています。

健康的な舌の目安


健康的な舌の表面は、薄く白い舌苔の中に、点々と味蕾細胞が確認できます。
そして、透明感のある、白い舌苔を通して、うっすらとピンク色の舌体が見えます。

そのように見える時は、舌苔が一番良好な状態の時です。

ちなみに、綺麗なピンク色や鮮明な赤色の舌は、実は問題があります。
東洋医学では、「紅舌」と言って、状態のよくない舌の一種に、分類されます。

毎日変化する舌苔


じつは、舌苔の量は、一日の中でも変化します。
何故なら、舌の状態は、ストレスや他の臓器の生理活性によって変化するからです。

例えば、起床時や、疲れた時は、この白い舌苔の量は増加します。
そして、身体が活動し始め、生理機能が高まると、舌苔は正常な状態になります。




正常な舌と苔の状態の画像写真


健康的で正常な舌苔の画像写真
正常な舌苔

舌の苔(コケ)の取り方について~良い取り方・悪い取り方

舌苔(ぜったい)の取り方~良いやり方と悪いやり方


正常な舌苔は、口腔内の細菌や免疫力をバランスよく保ち、口腔内を健康的に保ちます。
舌苔は取ればいいってもんじゃないのです。

やってはいけない舌苔の取り方



一番良くないやり方は、舌苔を取ろうとして、舌を傷つけることです。

歯ブラシや、舌苔除去用のブラシや、ガーゼ等で、ごしごしと擦り(こすり)取るようなやり方、つまり、物理的な方法で、舌苔を除去する時に、舌を傷つける危険が大きくなります。

また、発泡剤入りの歯磨き粉や、合成界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)やアルコールが入った、口腔洗浄剤(マウスウォッシュ)等を、過度に使うことも、舌の粘膜を傷めることになります。


舌を傷つけるとどうなるの?


舌の粘膜や、舌乳頭(ぜつにゅうとう)を傷つけると、味覚を感知する機能=味蕾(みらい)が悪くなります。
★味蕾(みらい)とは、食べ物の味を感じる小さな器官です。人間の舌には約10,000個の味蕾があります。

舌をごしごしと、過剰に刺激する事で、舌の表面にある舌乳頭が長くなったり、損傷を受けたりして、より細菌が繁殖しやすい環境になる為、舌癌等の病気になる可能性も有ります。

舌は口の中で一番潤いを必要とする粘膜です。
舌苔を必要以上に取り除くと、、余計にだ液の分泌を減らしてしまうことになります。


正常な舌乳頭の顕微鏡写真・拡大画像
正常な舌乳頭の顕微鏡写真
損傷した舌乳頭の顕微鏡写真・拡大画像
損傷した舌乳頭の顕微鏡写真


舌苔の理想的な取り方

  1. 唾液(だえき)を使って舌苔を取る
  2. プロテアーゼを使って舌苔を取る

唾液(だえき)を使って舌苔を取る


食事時以外の唾液(だえき)は、サラサラしています。
自然なだ液を、出しながら、舌を上顎(あご)にこすりつけて洗うことが大切です。
だ液が足りないなら、水を使ってください。
使うのは、水です。
お茶やコーヒーや、ジュースはだめです。
水です。

こうして、口の中の自浄力を養うようにすれば、口臭も徐々に減っていきます。

だ液と舌苔の関係

プロテアーゼを使って舌苔を取る


高齢者になるほど、唾液の分泌力は低下し、口腔内の自浄作用は衰え、乾燥し、舌に付いた苔は驚くほどの量や厚みになることがあります。

こうなると、自分の力で適度な量の舌苔にすることは、不可能です。
舌苔を形成している蛋白質(たんぱくしつ)を分解し、はがれやすくしてくれるプロテアーゼが、もっともふさわしいのです。

プロテアーゼとは
プロテアーゼを使った高齢者の舌苔除去と口腔ケア



舌の苔(コケ)を取ることの是非について

舌の苔は取った方が良いのですか?



結論


  • 取って良い舌苔と、取らない方が良い舌苔がある
  • 良い取り方と、悪い取り方がある
  • 取って良い量と、取りすぎてはいけない量がある



考察




基本的に、口の中を清潔な状態に保つ作業の延長線上として、舌苔の掃除をする事は大事です。
ただし、舌の掃除は適度にすることが重要なのです。

舌苔にも存在する意味があります


適度な量と質の舌苔は、口腔内の細菌や免疫力を適切に維持し、正常な生体機能のバランスを保ちます。

つまり、舌苔は「取り過ぎても、ダメ!」と言うことです。

舌のざらざら(舌乳頭)が見えるくらいに、程良く、薄く、白い舌苔は、健康な状態です。
その程度の舌苔の量であれば、他人が不快になるほどの強い口臭にはなりません。

舌苔が厚くなると違和感、味覚異常を覚え、口臭に影響を与えます。

こんな感じです~舌に生える苔~【ぜったい】について(画像写真付き)


舌の苔(コケ)の取り方について~良い取り方・悪い取り方

唾液の不足と口腔内への影響

唾液(だ液)が減るとどんな問題が起きるのでしょうか?



だ液は、食べ物を消化して食べカスを洗い流したり、細菌が増えるのを防いでくれます。
口の中の粘膜を守り、清潔に保ってくれます。

だ液が減り、口の中が乾燥してくると、色々な問題が発生します。

夜間、睡眠中は細菌の増殖タイムです。
健康な人でも睡眠中は、だ液が減ります。

そこで、朝起きた時には、だ液の量は激減していて、細菌は増え、口の中がねばねばしています。
そして、体が活動し始めると、だ液を作るだ液腺が刺激され、だ液がたくさん分泌されてきます。

唾液(だ液)の働き


だ液と口臭


唾液(だえき)が少ないと、口臭が強くなります。

だ液が減ると、食べた物を消化する力や抗菌力が下がってしまいます。
すると、口の中に残った食べカスが菌の働きで発酵し、不快な臭気を発生します。

だ液と口腔感染症


また、だ液が減少すると、口の中のさまざまな細菌が繁殖して、虫歯、歯周病など、口の中の感染症に直結していくことになります。

だ液と舌苔


唾液(だえき)が減り、口腔内の水分が不足すると、舌の苔(こけ)が増えやすくなります。
舌苔(ぜったい)が増えると、悪臭が発生します。
揮発性硫黄化合物の発生

熱がある、疲労がたまっているなど体調が悪いときや、お酒を飲んだ翌日なども、口のなかの水分が足りなくなり、舌には苔(こけ)の元になる、細菌や食物残渣がたまりやすくなっていきます。

ドライマウス


口の中が乾燥した状態を"ドライマウス"と呼びます。
ドライマウスは、『口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)』とも呼びます。

ドライマウスはした舌のコケ悪化の一番の敵です。


ドライマウスの予防


ドライマウスの予防としては、規則正しい生活を送り、ストレスを少なくすることが大事です。
精神的な不安状態は、唾液の分泌を妨げます。

睡眠時間は、最低でも6時間を目安にし、自律神経のバランスを整えます。


唾液が減る原因、理由


唾液(だえき)が減少する時の3大原因は、

  1. 自律神経の異常
  2. 薬の副作用
  3. 噛む力の低下(口腔機能の低下)
  4. シェーグレン症候群
  5. 加齢
  6. 煙草(たばこ)

です。

自律神経の異常による唾液の減少


だ液の分泌は自律神経が担っているのですが、この神経は、不規則な生活、不摂生、ストレス、緊張、精神的不安があると、バランスを崩して、体の機能に影響を与えます。
また、女性ホルモンの減少が影響していることも考えられます。


薬剤の副作用


精神安定剤、抗うつ剤、鎮痛剤、降圧剤などの薬の服用は、体中の生理的分泌を抑制する作用があります。

当然、だ液の分泌も抑えられて、口が渇く原因になります。
充分な睡眠をとって体調を整えることが、唾液の分泌にとっても大切です。

噛む力の低下(口腔機能の低下)


現代の食事は、昔に比べ、簡単に食べられ、柔らかい物が増えています。
時間に追われ、忙しい現代人は、ゆっくり食事をする時間も減っています。

食べ物をかむ回数が減ると、唾液腺を刺激する回数も減ります。


シェーグレン症候群


シェーグレン症候群という病気は、膠原(こうげん)病の一種です。

自分の免疫細胞の攻撃によって、唾液腺や涙(るい)腺がダメージを受け、そのために、唾液や涙の分泌量が減少します。

口の中が乾く、ドライマウスや、眼が乾くドライアイという症状が特徴です。



煙草(たばこ)・お酒(アルコール)・カフェイン飲料


タバコの成分であるニコチンは、末梢(まっしょう)血管を収縮させる作用がありますので、だ液腺の活動を抑え、だ液の分泌を減少させます。さらに、タバコのニオイは口臭に直結します。

お酒は、カフェイン入りの飲料と同じで強い利尿作用がありますから、体から水分を失ってしまいます。
コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェインやポリフェノールなどが入った飲み物も、一度にた量摂取することは避けてください。
利尿作用があるので、せっかくとった水分が、だ液分泌にまわらず、尿になって出てしまいます。

唾液の増やし方



  • 自律神経を整えること
    規則正しい生活を送り、ストレスを解消してゆったりとした時間を持ち、睡眠時間は6時間以上をキープすること
  • こまめに水分補給をすること
    一度に多量の水分を取っても、体内に吸収されず、尿や汗となり、身体の外に出てしまいます。
  • 唾液(だえき)の分泌を促しそうな食べ物を取ること
    梅干しやレモン、酢の物など酸っぱくて積極的に摂ること
  • 顎(あご)の運動をすること
    あごを上下左右に動かしたり、ガムをかむことで、だ液の分泌を促します。



はちみつ(蜂蜜)に含まれる健康成分

はちみつ(蜂蜜)に含まれる健康成分


オリゴ糖の効果


食欲不振 / コレステロール / 糖尿病 / 下痢 / 便秘 / 免疫力強化 / 過敏性腸症候群(IBS) 

果糖(フルクトース)の効果


血糖値の安定化 / 肝機能(肝臓) / 疲労回復 / 二日酔い 

ブドウ糖(グルコース)の効果


肝機能(肝臓) / 疲労回復 / 二日酔い  / 殺菌作用(過酸化水素を発生させる)

グルコン酸の効果


殺菌作用 / 整腸作用 

フラクトオリゴ糖の効果

肥満 / 便秘 / 動脈硬化 / 整腸作用 / 虫歯予防 

プロテアーゼの効果

消化促進・蛋白質(たんぱくしつ)の分解


ミネラルの効果

ハチミツには人間の健康維持に必要なミネラルがほとんど全て含まれています。
ナトリウム・リン・鉄・カルシウム・カリウム・マグネシウム・銅・亜鉛・マンガン

ビタミンの効果

ハチミツには約10種類のビタミンが含まれています。
ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB6・葉酸・ニコチン酸・パントテン酸・ビオチン・C・K・コリン

アミノ酸の効果

バリン・ロイシン・イソロイシン・アラニン・アルギニン・リジン・アスパラギン酸・グルタミン酸・プロリン・スレオニン・メチオニン・ヒスチジン・フェニルアラニン・チロシン・グリシン・セリン


ポリフェノールの効果

カフェ酸・p-クマル酸・フェルラ酸・ケンフェロール・クリシン・ケルセチン・p-ヒドロキシ安息香酸・バニリン酸・バニリン・シリングアルデヒド・ガランギン


有機酸と過酸化水素の効果


花園養蜂場によると、
「はちみつに含まれる有機酸(グルコン酸)と過酸化水素の強い殺菌力が、呼吸器細菌の増殖を抑える働きがある」とのことです。

エジプトのピラミッドから発掘されたという3000年以上も前のはちみつが全く変質しておらず、食べることができたという記録があることも、はちみつの殺菌力の凄さを証明しています。

プロテアーゼを使った高齢者の舌苔除去と口腔ケア~蜂蜜(はちみつ)編

蜂蜜(はちみつ)を使用した口腔ケアによる舌苔の除去


新潟県中条病院の看護師さんが取り組んだ、高齢患者の舌のコケ(舌苔:ぜったい)を取り除く為の実験結果です。

蜂蜜(はちみつ)の舌苔除去効果・殺菌効果・口臭予防


蜂蜜(はちみつ)に含まれるプロテアーゼのたんぱく分解作用が舌のコケをはがれやすくし、グルコン酸の殺菌作用が舌苔を形成しているバイオフィルム(細菌の集まり)を、退治してくれると考えられる。

実験にいたった経緯
当病棟A チームは、入院患者22名中、約半数が寝たきり度ランクC-2の患者である。
その中でも、自ら口腔ケアができず、連日、看護者が薬液2倍希釈オキシドールを使用し口腔ケアを行っている患者が多い。
しかし、患者のなかには認知症があるために、上手く開口ができず、口腔ケアが十分に行えないため、舌苔の付着が見られている患者が多い。
試行錯誤のうちに、認知症があり開口できない患者への口腔ケアで、蜂蜜(はちみつ)を使用することで、開口を促せたという先行文献を見つけることができた。

薬液を使用しなくても、はちみつを使用した口腔ケアで舌苔の除去・減少が図れるのではないかと考え、検証した。

はちみつを使用した口腔ケアによる舌苔の除去


蜂蜜を使用した舌コケ除去の実験


実験の目的:
はちみつを使用した口腔ケアにより、舌苔の除去・減少を図ることが出来るか?を確かめる。

実験方法:
対象者4名の舌苔に対し、蜂蜜(はちみつ)の塗布を行い、舌の状態の変化を見る。

実験結果:
はちみつの塗布を8回実施したところ、対象者4名ともに、舌苔の除去・減少が見られた。

結論:

  1. 蜂蜜は、舌苔の除去と減少に対し、効果がある。
  2. 蜂蜜によって、口腔内の湿潤を得ることが出来る。
  3. 蜂蜜を使用した口腔ケアは、認知症患者の味覚を刺激し、自然な開口を促し、無理のない口腔ケアが可能になる。

実験方法の詳細
寝たきりの認知症患者4名での実験
対象者=寝たきりで自ら口腔ケアできず、舌苔のある認知症の患者4名。

A :80歳代女性、脳梗塞、常時閉口している。気管切開、人工呼吸器装着中。胃瘻より経管栄養管理。

B :80歳代男性、脳梗塞、開口発語可能。IVH にて栄養管理。

C :80歳代男性、脳梗塞、開口発語可能。嚥下困難食を介助にて経口摂取している。

D :80歳代男性、脳梗塞、開口可能。IVH にて栄養管理。


実験方法の詳細

連日の2倍希釈オキシドールを使用した口腔ケアと併用し、舌苔の除去を目的としたはちみつの塗布を行う。

1回/週、原液のはちみつ約5g を綿棒に含ませ、舌に塗布する。
はちみつ塗布前後の舌の状態を評価基準に沿って評価する。


評価基準

評価0=舌苔なし
評価1=舌の半分に舌苔あり
評価2=舌の全体に舌苔あり
評価3=舌全体に舌苔が蓄積

実験結果の詳細

初回と最終の評価を比較すると4氏に共通して舌苔の改善が見られている。


A 氏は、常に閉口しており、口腔内は湿潤していたが、舌の中央部には舌苔の付着が見られていた。
ケア7回目までは、塗布前の評価2から塗布後評価1と舌苔の減少は図れたが、除去までには至らなかった。
8回目のケアでは、塗布前評価2から評価0となり、舌苔の除去ができた。

B 氏は開口状態であることが多く、舌苔付着、口腔内の乾燥だけでなく痰のこびりつき、付着物も見られた。
毎回のケアで口腔内の汚れが除去でき、湿潤も図れた。
ケア2回目は、塗布前の評価3であったが、ケアの回数を重ねるごとに評価は良くなっていった。
また、「甘いもの大好き」との言葉も聞かれ、はちみつを好み口腔ケア時には開口を促せた。
口腔粘膜を傷つけることなく痰のこびりつきや粘膜の付着物の除去もできた。

C 氏は開口状態であることが多いが経口摂取しているケースであり、口腔内の強度の乾燥はなかった。
毎回のケアで舌苔の除去が図れた。ケア2回目までは、はちみつ塗布前の評価2であったが、5回目からは塗布前評価1となった。
舌の乾燥が見られたが、はちみつ塗布により湿潤が図れた。
甘いものを好む方で、はちみつ塗布時には「もっとくれ」と口を開け催促する姿が見られた。

D 氏は、途中転棟されたため、ケアは5回実施した。
常時開口状態で、口腔内の乾燥、付着物、口臭のある方だった。
はちみつ塗布前の評価は2であったが、塗布により評価0となり、舌苔の除去が図れ湿潤、口臭の軽減もできた。
オキシドールによる口腔ケア時に比べると開口は良好であった。


考察

今回の研究対象者4名のうち3名は常時開口状態であるため、唾液の分泌が減少し、口腔内の自浄作用が減弱しており、口腔内の乾燥、汚染、舌苔の汚れが著しい状態であった。

また、認知症のため、口腔ケアが認知できず、ケアの際閉口してしまい口腔内清掃が十分に行えていなかった。
口腔内環境を整えるためには、粘膜、舌、歯のケアが必要であると考える。

口腔内は

「粘膜面は舌背に比べると、細菌を含む汚れの付着は少ない」と言われ「舌背は舌苔の付着により細菌の温床となりやすく嫌気性菌が増殖することで口臭の原因になるだけでなく、肺炎の原因にもなりうる」
と言われている。

対象者は残存歯が少ないため、舌苔に焦点を置き、その除去が必要と考え研究に取り組んだ。

舌苔は口腔内の細菌バランスを保つのに役立っているとも言われ、舌苔の清掃は週に1回が目安と言われている。

このため、連日の薬液を使用した口腔ケアと併用し、殺菌作用があると言われているはちみつを使用したケアを週1回行ってきた。
はちみつを使用した口腔ケアを実施したところ、対象者4名とも、はちみつ塗布後には舌苔の除去、減少が図れただけでなく、乾燥状態の口腔粘膜の湿潤も図れた。


また、認知症があり開口が認知できない対象は、はちみつの甘味が味覚を刺激したようで
薬液を使用した口腔ケア時よりも開口することができ、舌苔の除去と無理のない口腔ケアが可能となった。
花園養蜂場によると、「はちみつに含まれる有機酸と過酸化水素の強い殺菌力が、呼吸器細菌の増殖を抑える働きがある。」)と述べている。

エジプトのピラミッドから発掘されたという3000年以上も前のはちみつが全く変質しておらず、食べることができたという記録があることも、はちみつの殺菌力の凄さを証明している。

このような、はちみつの強い殺菌作用から、舌苔の除去、減少を図ることができたと考える。
また、はちみつを使った口腔ケアをすることで、乾燥していた口腔内が湿潤した。

口腔内に付着した粘調な痰や舌苔などは乾燥した状態で除去するのは困難である。
はちみつを使用することで乾燥したものが軟化し除去しやすくなった。
はちみつは保湿効果もあり、虫歯の原因菌であるミュータンス菌の繁殖を防ぐ効果があるため、塗布しても虫歯にはなりにくく口腔内の乾燥予防にも効果があると言える。

今回、舌苔の除去に取り組み、肉眼的に改善が見られた。
はちみつ塗布前後の細菌量の比較を行ったわけではないが、舌苔の除去、減少が図れたことや、口腔内の乾燥予防にも効果があること、認知症患者の開口を促すことができたことから、はちみつによる口腔ケアは有効であると言える。